【感想】往復書簡 湊かなえ

書評

このブログ,本の感想が一番多い記事になりそうなので分類を変えようか悩んでいます。笑
→書評カテゴリ作りました!

湊かなえさんは私がここ数年どハマりしている作家さんです。

往復書簡について

高校教師の敦史は,小学校時代の恩師の依頼で,彼女のかつての教え子六人に会いに行く。六人と先生は二十年前の不幸な事故で繋がっていた。それぞれの空白を手紙で報告する敦史だったが,六人目となかなか会うことができない(「二十年後の宿題」)。過去の「事件」の真相が,手紙のやりとりで明かされる。感動と驚きに満ちた,書簡形式の連続ミステリ。

往復書簡 湊かなえ

この解説の通り,本作品は手紙のやりとりという形で話が進んでいきます。

また,ここに説明される二十年後の宿題の他に2つの話がある中編集のような作品でした。

  • 十年後の卒業文集ー高校の同級生だった女の子4人組の手紙のやりとり
  • 二十年後の宿題ー小学生時代とある事件に巻き込まれた同級生6人と会った人物からの報告の手紙
  • 十五年後の補習ーボランティア隊に参加する彼氏と日本に残る彼女との手紙のやりとり

あらすじでは,ネタバレしてますのでご注意ください。

往復書簡 幻冬舎文庫 / 湊かなえ ミナトカナエ 【文庫】

価格:660円
(2019/11/14 21:41時点)
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十年後の卒業文集

あらすじ

谷口あずみ,高倉悦子,山崎静香,千秋の4人の手紙のやり取りで話は進みます。

高校時代はあずみ,悦子,静香,千秋の女の子4人と,浩一,文哉,良太の男の子3人のグループで仲良くしています。
その中で千秋と浩一が付き合うようになるのですが,手紙の時系列ではそこから10年後となっています。
高校卒業から10年後では静香と浩一が結婚式をあげています。
その結婚式には千秋以外の悦子とあずみが参加していたのですが,結婚式後に千秋の行方不明の理由について悦子があずみや静香に手紙できく,というのが大筋です。

しかし,あずみや静香に手紙で聞いていたのは実は悦子になりすました千秋だったのです。
そもそも静香の結婚式にも悦子に扮した千秋が参列していて,そこで気になったことを悦子のふりをして,あずみや静香に手紙で聞いていたのでした。

感想

自分が他人からどう思われているか,グループの中でどういう立ち位置であるのかというのは女子にとっては重要なことです。

通常,それは確かめることができないのですが,この手紙の中ではグループの中の別人に扮することで,どう思われているかを確認します。

彼氏と別れたり,友人とすれ違ったり,そういったことがあるたびにいろんな噂をされて,噂では事実とは違うことになっていたりします。
この話では千秋は静香やあずみが誤解していることを手紙で確認しますが,決して弁解はしないんですよね。
悦子だと思われていることも弁解しない要因だとは思いますが,手紙で確認してそれで楽しい青春時代だったと言える。

そんなところから,きっと静香やあずみが思うよりもずっと千秋は充実した生活を送れていて高校生時代をいい思い出にできているのかなと思いました。

他人から見た自分って難しい。。

二十年後の宿題

あらすじ

小学校時代の恩師・竹沢真智子と元生徒の大場敦史の手紙のやり取りで話は進みます。

大場敦史を教える前任の小学校で竹沢先生は,当時の教え子6人と事故に巻き込まれています。
その6人の教え子の近況を知らせて欲しいと大場にお願いし,大場が報告するという形式で手紙のやり取りが行われます。

6人の教え子は,河合真穂,津田武之,根元沙織,古岡辰弥,生田良隆,藤井利恵の6人。

起こった事故は,竹沢先生夫婦とこの6人の生徒がピクニックに行った際に,水難事故で竹沢先生の夫が亡くなってしまったというもの。

ピクニックのきっかけは利恵と辰弥が宿題で出された作文をきっかけにケンカをしたのでその仲直りのため。
ピクニックのメンバーは土日に両親と出かけられないような家庭環境にあった生徒。

水難事故のきっかけはピクニックの際に,川遊びをしたいと辰弥が言い出し,強引に良隆も誘ったこと。
運動が苦手な良隆は川で足を滑らせてしまう。
それを助けに竹沢先生の夫が飛び込むが,竹沢先生の夫は泳ぐことができなかった。

その後,竹沢先生も助けに飛び込んだが,良隆は助かり夫は亡くなってしまった。

しかし,この手紙の中で明かされるが先生の夫は,たとえこの事故がなくても病気のために長くない命であった。
残された時間を夫が楽しむために,先生が企画したピクニックでもあったのだ。

実はこの話は,大場と付き合っている利恵が過去の事故の罪悪感から,結婚に踏み切れない心境を竹沢先生に相談したことがきっかけで,竹沢先生が大場に手紙を書いたものであった。

感想

利恵と辰弥がケンカするきっかけにもなった「家族」の作文。

事故のような万が一の状況で,生徒を助けるか家族を助けるか。

大切なものとその選択について考えさせられる作品でした。

十五年後の補習

あらすじ

純一と万里子というカップルのやり取りです。

純一は国際ボランティア隊としてP国に赴任しています。

2人には高校時代に同級生を亡くした過去があります。

手紙のやり取りの当初は記憶を失っていた万里子が,徐々に真実を思い出してしまう。

亡くなった同級生は一樹と康孝。

一樹の母親は複数の愛人がいて,その一人が康孝の父親だった。

康孝はそれを知り,一樹をなじる。
それに対して一樹は,康孝に暴力を振るう。
万里子は正義感が強く,暴力はいけないと一樹に注意していた。

一樹の暴力がエスカレートし,ある日康孝は一樹と万里子を倉庫に呼び出した。

そこで康孝に閉じ込められる2人。

脱出を試みる中で,万里子は一樹に犯されそうになり,近くの角材で撲殺してしまう。
そこに閉じ込められた2人を助けようと純一が倉庫に現れる。

そして,万里子を助けるために純一は倉庫に火をつけて,康孝のタバコの不始末だと康孝に伝え,康孝はショックを受けて飛び降り自殺をする。

感想

なんとも衝撃的な事実が明らかになっていくものでした。

途中,全てを知っている純一は,自分のせいだと万里子をかばう嘘をついたりもします。

純一の嘘と愛。

相手を想う嘘と傷つける嘘。

そして,大人の事情に巻き込まれて仲がギクシャクしてしまった一樹と康孝。

複雑な気持ちになるし,この後純一と万里子の関係はどうなるんだろうと思いました。

一年後の連絡網

あらすじ

エピローグ的な作品。

ここで梨恵と大場が順調に交際していて婚約していること,純一の赴任国に万里子が遊びにきて交際が続いていることなどが明らかになります。

感想

なんとなくハッピーエンドでよかった!!笑

湊かなえさんの作品はイヤミスなど人が死ぬ作品も多いですが,この作品は死んだ人もいますが比較的ハッピーエンドで中編集なので読みやすいと思います。

そして,湊かなえさんの特色である人間関係の描きかたが,すごくうまく描かれた作品でした。

湊かなえ作品はいろんな人間が語り口になって展開され,自分が感じていることと相手から見た自分との相違から事件が起こることが多いです。

自分の生活の中でも,もちろん殺人とかはないけれど,人間関係において自分が感じたことと,相手から思われる自分とが違っていて,うまく会話が噛み合わないとかそういうことってあると思うんですけど,そういう微妙な気持ちが描かれているところがすごく好きです。笑

モヤモヤーとする人間関係を,あるよねーと思わせてくれる感じ。
そしてさすがに殺人とかないし,ま,なんとかなるかと思える感じ。笑

まとめ

  • 十年後の卒業文集ー高校の同級生だった女の子4人組の手紙のやりとり
  • 二十年後の宿題ー小学生時代とある事件に巻き込まれた同級生6人と会った人物からの報告の手紙
  • 十五年後の補習ーボランティア隊に参加する彼氏と日本に残る彼女との手紙のやりとり

の3つからなる中編作品でした。

湊かなえ作品らしい人間関係の複雑さを描いた上で,手紙をやり取りする主人公がそれぞれに幸せになる感じの作品で,イヤミス要素も少なくハッピーエンドが好きな方にもオススメの作品でした。

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ここまでお読みいただいてありがとうございました。

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